原油安が世界に与える影響

今、この世界では中東付近の国々たちが世界を動かす力を持っています。というのも彼らの1番の武器はもちろん石油です。しかしそんな石油ですが、昨年からかなりの危機に陥っています。まさしく原油価格の暴落です。

ここ数年にかけて、ISISもそうですが、サウジアラビアとイランの対立があったりなどで中東・アラブ付近がかなり荒れています。そして何よりも原油価格は日本にもかなりの影響がある事なので取り上げることにしました。

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もくじ


まず石油とは何でしょうか。

石油(せきゆ)とは、炭化水素を主成分として、ほかに少量の硫黄・酸素・窒素などさまざまな物質を含む液状の油で、鉱物資源の一種である。地下の油田から採掘後、ガス、水分、異物などを大まかに除去した精製前のものを特に原油(げんゆ)という。 Wikipedia参照


簡単に言うと、石油というのはあらゆるもののタネです。化粧品やプラスチック等といった、ありとあらゆるものが石油から加工されていたりするのは皆さんもご存知の通りです。そんな日本は国内の約87%の石油を中東の国々から買っているそうです。なので日本ではこの原油安の影響によって石油をいつもより安く買うことができています。僕自身は車を持っていないのであんまり実感はしていないのですが、持っている方はここ数年に比べてガソリンの価格が安いなぁと気づいた方もいるんではないでしょうか。

そしてその原油安の効果で物価の価格が上手く下落して、国民の消費にも刺激が与えられ、それが企業の業績に繋がり、国民の給与アップに繋がり、国の景気回復まで繋がればいいのですが、そうは簡単にはいかないのが現実です。ちなみに量的緩和などの政策によって物価2%の上昇を目指している日銀の立場から考えると、今の現状でのこの原油安は彼らにとってかなりの足かせになっているようです。

一方世界を見渡して見ると、この原油価格の暴落によって国の国益のほとんどをエネルギー資源にに依存していたロシアやベネズエラ、主にブラジルなどが今、窮地に立たされています。特にベネズエラに関しては国家の危機と言っても過言ではないです。先月にベネズエラの大統領が自ら『経済緊急事態』を宣言する騒ぎとなり、今までタダ同然であったはずのガソリンなどの価格が一気に60倍に上がり国民の生活に大きな影響を与えているようです。ブラジルも原油価格の暴落により極度のレアル安と共に景気が落ち込み、本当に今年のオリンピックが開催出来るのかも不安な状況です。日本のような輸入国にとっては好都合ですが、石油が世界に与える影響はすさまじいものがあると思います。

原油価格の崩壊の背景

今までは1バレル100ドル前後で取引をされていた原油ですが、昨年の夏からみるみるうちに落ちていき一時は30ドルを切るほどになりました。つまり、たった半年間で約3分の1ほどになってしまったことになります。原油などといったエネルギー資源の低迷はその資源国の経済を一気に低迷させます。ひとつの理由として、その国の富裕層から一般人までがどうにか自分の資産だけは守ろうと必死に外貨に変えている動きがあるので円も最近になって円高傾向にあると思います。

そもそも原油価格が下がったならば原油そのものを減産して価格を吊り上げればいいことけれど、そう簡単にはいかないのが現実です。それは何故かと言うと産油国が下落した分を、輸出量を増やすことによってその分の価格をとり戻そうとしているからです。つまり価格が下がったものをさらに大量に輸出しようとしているので、まるで自分で自分の首を絞めているようなことが起きているのです。そんな原油安により国が不景気になっていき、このままでは本当に危ないと思っているひとも少なくないと思います。

しかし石油の価値は必ずまた上がります。すぐに上がることはないですがこの現代文明が石油に頼り続けているうちは自然とまた上がるようになっているのです。

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photo by NWFblogs

中国の減速

今までのグローバル経済の中では『これからは中国に主導権がある』『世界第二経済大国』なんてことを言われていました。しかし、そんな中国も去年の夏を境に中国バブルは崩壊したと少なくとも僕は思っています。中国は確かに急速に成長を遂げ、世界の成長エンジンとして大きな役割を果てしていました。しかし、その成長過程の中で大量の石油をがぶ飲みしている国のひとつでもありました。そんな中国の低迷により石油の需給バランスが取れず、そのせいで原油価格の下落の大きな理由のひとつでもあると思います。

ちなみに中国の失速のきっかけとなったのは去年の夏に起きた上海株式市場の株価暴落なのですが、その前から中国経済はのらりくらりで来ていたのでいつ崩壊してもおかしくなかったのです。そして中国の減速の影響はもちろん原油だけではありません。多くの日本企業も中国と深いかかわりがあったので、日本の株式市場も株安に見舞わまれました。もうこれ以上、中国に頼った経済政策は出来ないということです。なにせ一党独裁政治であらゆる問題を抱え込む中国がこれから世界の主権を取ることはあり得ないからです。中国についてはまた別で書きたいと思ってます。

人間は一生石油に頼りつづける運命

そもそも石油の消費というのは人口が増えれば増えるほどそれに比例して増えていきます。現在、世界の人口は2011年に70億人を超え、2015年にはついに72億人を超えた言われています。数十年後には約80億人を超え、それからも増加していくと言われています。

今の現代文明は石油がなければ終わってしまい、石油がなければ人間は生きていけない状況です。そのくらい私たちは石油に依存しているのです。石油はまさに『麻薬』のようなものであり、一回使うとやめられず、そしていくらあっても足りず、この文明自体が永遠に欲しつづけます。

話は少し変わりますが、最近、電気自動車などが注目を浴びています。しかし、車だけが電気で走っても仕方がないと言うことです。飛行機は電気で動かないし、電車も電気では動きません。船も電気では動きませんし、もっと言えば原子力発電所も電気だけでは動きません。これからもし本当に石油なしで人間が生きていけるとするならば、相当な技術革新が必要です。しかしそれが今後10年20年で起きるとは考えづらいです。

  • 人口が増えれば増えるほど、石油の消費が増す。
  • 世界が荒れて、戦争をすればするほど、石油の消費が増す。
  • 石油に変わる技術革命が失敗し続ければ、石油の消費が増す。


つまり今の状態では何もしなくても石油の消費は増え続け、石油が取れなくなったら現代文明も終わりと化してしまうのです。今の現代文明は間違いなく石油に完全依存しているのであり、これからも石油なしでは人間は生きていけないということです。